完全ガイド:便秘の仕組みと治し方

徹底解説:便秘|専門家が教える便秘のメカニズムと直す方法
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便秘――多くの人にとってなじみのある症状ですね。男性よりも女性に多く、肌荒れやニキビなどの原因となって美容の大敵ととらえられがちですが、そればかりではありません。精神的に変調をきたしたり、がんが背後に潜んでいたりします。原因もタイプもさまざま。でも、なじみがあるだけに、軽く考えたり思い込みで対処したりしがちです。正しい知識を得て便秘を改善・解消し、健康で快適な生活を実現しましょう。

1. 便秘と便意の仕組み

1-1. 便秘の定義

何をもって便秘とするかは、医師の学会によっても定義が分かれていますが、一般的に、便が3日以上出ないか排便回数が週2回以下の場合、便秘とされます。食べたものが便として排出されるまでに大体24~72時間かかると言われているのです。でも、3日以上排便がなくても、定期的に便意をもよおしてきちんと出てくれるなら、心配することはありません。特に、ダイエットをしているときなどは、食事の量も減っているはずですから、便が少なくなるのは当たり前。私も糖質制限ダイエットをしている間、4、5日に一度という頻度でしたが、排便に多少時間を要した以外には、特段、困ることはありませんでした。

逆に、毎日排便があっても、量が少ない、残便感がある、便が硬くて出にくいなどで不快と感じるなら、便秘と考えてください。 男性より女性が多く、特に思春期に便秘になるのはほとんどが女性です。ただ、60代以上になると男女差はあまりありません。

1-2. なぜ女性に多い?

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女性ホルモンの一つである黄体ホルモン(プロゲステロン)は妊娠に欠かせませんが、正常な便通の基本となる大腸の「ぜん動運動」を抑える方向にも働きます。特に月経前は黄体ホルモンの分泌量が増えるため、便秘になりやすいのです。こう考えると、10代の便秘が女性に圧倒的に多いことも、閉経後の60代以降は男女差がほとんどないことも理解できますね。

また、女性は排便を我慢しがちなこと、おならを我慢して腸内にガスをためやすいことも一因とされています。さらに、出産で膣壁が弱くなったため直腸の便が膣側に入り込んだ形でたまる(直腸瘤)、腹筋などの筋力が元々弱い、ダイエットする人が多いことなども理由に挙げられます。体調の変化を男性よりも敏感にキャッチする傾向があるので、不調を感じたことによるストレスも一因となっている可能性があります。

1-3. 便意が起きるのは副交感神経の働き

便秘の原因を理解する前提として、なぜトイレに行きたくなるのかをご説明しましょう。

食べ物は食道から胃、十二指腸を経て小腸、大腸と運ばれて排出されますね。小腸では栄養が、大腸では水分が吸収されます。このため、便が何日もたまっているとどんどん水分が抜け、より硬い便になるため、一層排便が難しくなるのです。

胃に食べ物が入ると、その刺激で小腸と大腸では収縮と弛緩を繰り返すぜん動運動が起こります。これにより、大腸のS字結腸にたまっていた便は肛門に近い直腸に送り込まれて腸壁を刺激、その信号が大脳に伝えられ、大脳からは「便を出せ」という指令が出ます。これが便意です。

人間の体って、うまくできていますね。こうした刺激の伝達は自律神経の交感神経と副交感神経のうち、副交感神経が優位な時に活発になります。副交感神経はリラックスしているときや寝ているときに機能します。ですから、夜寝ている間に便が直腸にたまっていきます。朝起きた時に便意をもよおすのはこのためです。朝食後に便意を感じやすいのも、起床時は胃が空っぽになっていて、食事による刺激が大きいからです。

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皆さんの中には、本屋さんにいると便意をもよおすという人はいませんか? ある調査では4人に1人が、あるいは10人から20人に1人がそう感じているという推計もあります。私もその1人です。こうした〝症状〟を「青木まりこ現象」と言います。不思議なネーミングですが、一躍知られるきっかけとなった雑誌への投稿者の名前に由来しています。掲載されたのは1985年。それ以前から同じような指摘は散見されていたのですが、この投稿をきっかけにメディアに広く取り上げられるようになり、さまざまな研究や考察が発表されるようになりました。医学的、生理学的に定説があるわけではなく、逆に単なる「都市伝説」だという指摘さえあったのですが、いろんな専門家が以下のように原因を推論しています。

・インクや紙の匂いが便意を誘発する

・静かな環境下でリラックスすることによって肛門括約筋が弛緩するため

・本を探さなくてはというプレッシャーが刺激になる

・トイレで読書するという習慣が招く条件反射

他にも多数の説があります。いずれにしても、病気とは言えませんので、あまり神経質に考える必要はなさそうです。

1-4. 便秘にもタイプがある

便秘は、腸に病変があって起こる「器質性便秘」「機能性便秘」とに分かれます。後者はさらに細かく分けられますが、中でも最も悩みの深い「慢性便秘」を中心に説明しましょう。慢性便秘も3つのタイプに分かれます。

 弛緩性便秘
 大腸のぜん動運動が鈍くなったり筋力が低下したりして、便を送り出す力が弱くなるのが原因。高齢者や運動不足の人に多い。便秘薬の飲みすぎも要注意。

 痙攣性便秘
 腸のぜん動運動が強すぎて腸がけいれんを起こしたり腸管が細くなったりして、便の通りが悪くなる。不規則な生活やストレスによる自律神経の乱れが影響しており、便秘と下痢を繰り返しやすく、腹痛も。

 直腸性便秘
 便が直腸に届いているのに、便意がうまく伝わらないタイプ。便意を我慢しすぎるなど排便リズムが狂っていると起こりやすく、高齢者にも多い。強い残便感もある。

このほか、薬の副作用で起きる「医原性便秘」があり、器質性便秘を起こす病変には大腸がんや腸の炎症・閉塞などがあります。

2. 便秘が引き起こす症状

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2-1. 便は老廃物の塊

便は栄養や水分が吸収された後の老廃物の塊ですので、腸内に長くたまっているといろいろな悪さをします。

みなさんは「腸内フローラ」という言葉を聞いたことがありますか?
腸内には数百種類100兆個といわれる細菌が住んでおり、大きく善玉菌、悪玉菌、日和見(ひよりみ)菌に分類されます。それらの菌が種類ごとに集まって生息している様子を、お花畑に例えて「フローラ」と呼んでいます。ビフィズス菌や乳酸菌に代表される善玉菌はその名の通り、体にとっていい働きをし、有害物質を作る悪玉菌の増殖を抑えてくれます。ところが、便秘になると両者のバランスが崩れて悪玉菌が増殖し、悪玉菌自体が腸内の腐敗を進めるとともにアンモニアや硫化水素などの有害物質を生み出します。腸内にたまった有害物質は出口を求めて腸壁から血液中に溶け出し、全身に回っていきます。これがさまざまな症状を引き起こすのです。

2-2. 肌荒れやがんの原因に

便秘が原因となる症状や病気には、以下のようなものがあります。

 肌荒れや吹き出物、ニキビ、いやな体臭
 大腸がん
 痔
 動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病
 便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群
 頭痛や肩こり、倦怠感、情緒不安定を招く自律神経失調症

血液中に溶け出した有害物質の一部は、毛穴や汗腺から皮脂や汗と一緒に外へ出ます。これがお肌の大敵で、肌荒れやニキビなどを生じさせるのです。また、悪玉菌は発がん物質も作り出し、腸内細菌のバランスが崩れることから生活習慣病になりやすいですし、過敏性腸症候群と自律神経失調症は自律神経の乱れが引き起こします。このほか、人によってはイライラや集中力不足なども招きますし、何より、便秘が続いているだけで不快感はぬぐえませんね。

3. 便秘解消でスッキリするために

ここまでみてきた便秘の原因や、便秘が引き起こすさまざまな症状を踏まえて、便秘の改善・解消のための日常の心得を考えましょう。基本は「自律神経の正常な働き」と「腸のぜん動運動」です。

3-1. 食事で治す

以下は便秘改善・解消に効果があるとされる栄養素や食品です。

 ビタミン
中でもビタミンEは自律神経を整えたり、血行を良くしたりする作用があり、ビタミンB群も副交感神経を刺激して腸のぜん動運動を高めます。ビタミンEを多く含む食品は、スジコやイクラなどの魚卵、植物油、アーモンドやピーナッツ、大豆などの豆類、野菜では大根の葉や西洋カボチャなど。ビタミンB群は牛やブタのレバー、ウナギ、カツオなどに多く含まれます。

 水分
水分が不足すると、便が硬くなるとともにかさも減り、便が出にくくなります。望ましい水分量は体重によっても異なりますが、1日1.5~2リットルを目安にしましょう。特にお年寄りは水分不足になりがちです。水分を十分にとると熱中症予防にもなります。また、朝起きてコップ1杯の水や牛乳を飲むのも、腸が刺激されて便意を感じやすくなります。ハーブティーや玄米茶などもお勧めですが、緑茶や紅茶は便を硬くするタンニンを多く含むため、避けた方がいいでしょう。

 発酵食品
善玉菌を増やして腸内をきれいにします。味噌やヨーグルト、漬物、キムチ、納豆など身近にたくさんあります。

 脂肪
腸粘膜を刺激して、便の排出をスムーズにします。ただし、取りすぎは体重増や血管の劣化を招きますので、ほどほどに。また、オレイン酸が多いオリーブオイルなど良質な植物性油もぜん動運動を活発にし、便の通りもよくなります。

 オリゴ糖
インゲンやゴボウ、玉ネギ、豆類などに多く、乳酸菌を増やします。

 クエン酸・リンゴ酸
クエン酸は梅干しやレモン、キウイに、リンゴ酸はリンゴに多く、腸のぜん動運動を高めます。 このほか、果物に多いカリウムも腸のぜん動運動を高め、アーモンドや穀類、魚介類、海藻などに多いマグネシウムは便を軟らかくしてくれます。

バランスの良い食事は肌荒れや生活習慣病の改善など、便秘に付随する症状にも効果的であることは言うまでもありません。

3-2. 悩ましい食物繊維

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さて、便通をよくして便秘を防ぐためには食物繊維の摂取が大切ということは、便秘で悩む皆さんでしたら知っておられるでしょう。食物繊維は大半が便になるうえ水分を吸収して膨らみ、腸を刺激して活動を活発にさせるからです。食物繊維を多く含む食べ物には豆類や海藻類、キノコ、穀類、野菜、果物などがあります。 食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、腸のぜん動運動の弱い弛緩性便秘になりやすい人は不溶性食物繊維を意識してとるのがいいですね。野菜ではキャベツやレタス、インゲン、大豆、グリーンピース、パセリ、切り干し大根、枝豆など。キクラゲや干しシイタケもいいですし、パンではライ麦パンに多く含まれます。 一方、便が固くなる傾向のある方は、水溶性食物繊維を取るのが良いです。水溶性食物繊維は、こんにゃくや海藻類に特に多く含まれ、便を柔らかくする働きがあります。また、水溶性食物繊維は腸内をゆっくり移動するのでおなかがすきにくく、糖質の吸収をゆるやかにして食後血糖値の急上昇を防ぐ効果もあります。

ところが、すでに慢性便秘に苦しんでいるとなると、話は変わってきます。不溶性食物繊維をたくさんとると、便がたまっているところにさらに便が送り込まれ、便が余計に通りにくくなると言われています。この場合は、まず食物繊維の摂り過ぎは避け、他の対策から講じましょう。

3-3. 運動と規則正しい生活習慣も大切

腸の働きが衰えて便を送りだす力が弱っている原因は、運動不足と不規則な生活習慣にもあります。1日10~15分でいいですから、適度な運動で体を動かしましょう。血流が良くなって、腸の動きが活発になります。また、寝転んでかかとを浮かせて10秒ほどキープするなどの腹筋運動も効果的です。腹筋に力がつくと排便も楽になります。 排便をスムーズにするには、規則正しい生活サイクルを維持することです。まず、3食きちんと食べること。朝食後には必ずトイレに行くこと。便意がなくてもトイレに入るようにしますが、数分で出なかったらトイレから出てもかまいません。
ストレスをためない工夫も、自律神経を正常に機能させるためには大事なことです。

3-4. 体操やマッサージで改善を

簡単な体操などを毎日続けて便秘の改善・解消に取り組みましょう。いずれも腸に刺激を与えて動きを良くしようという狙いです。

3-4-1. ガス抜き体操

腸内にガス、特にメタンがたまると腸の動きが悪くなって便秘を悪化させます。ガスが出やすくするにはいろんなやり方がありますが、簡単なのは、うつ伏せに寝て左右にゴロゴロ転がるというもの。また、仰向けに寝て片足ずつ膝を両腕で抱えて胸に引き寄せる体操や、仰向けに大の字になってから右足を直角に曲げて左に倒してウエストをひねる体操もあります。呼吸を意識しながら左右交互にやってください。以下の画像はガス抜きに効果のあるヨガの「胎児のポーズ」です。上半身の力を抜いて下腹に意識を集中するのがポイントです。ぜひお試しください。

ガス抜きヨガ・胎児のポーズ―徹底解説:便秘|専門家が教える便秘のメカニズムと直す方法

3-4-2. バタ足体操

うつ伏せに寝て、水泳でバタ足をするように膝を伸ばしたまま左右の足を大きく上下させます。ゆっくりすることを心がけてください。同じ姿勢から膝をお尻につくぐらいまで交互に曲げる体操もあります。

3-4-3. お腹マッサージ

お腹に両手を当てて、時計回りの方向にゆっくり動かします。強く押さずにさする程度で十分です。また、左の腰骨の内側に位置するS字結腸をお腹の上から刺激するのも効果的です。

3-4-4. ツボマッサージ

便秘に効くとされるツボはたくさんあります。

まず合谷(ごうこく)。人差し指と親指の骨がくっついた内側の甲の部分です。
神門(しんもん)は小指から下がってきた手首の横しわの入った部分。
足では外側くるぶしの指4本分上にある三陰交(さんいんこう)や、すねの外側で膝から指4本分下の足三里(あしさんり)。
お腹ではおへその指3本分外側の天枢(てんすう)や、そこから指3本分下の大巨(たいこ)。
足裏の土踏まずの周辺も大腸や直腸に関係しています。背中にも背骨から指2本分外側の腰骨あたりにある大腸愈(だいちょうゆ)や、肋骨の指2本分下で背骨から指4本分外側の便秘点などがあります。
どのツボも左右にありますから、どちらも押さえるようにしましょう。

以下は、施術者全員が国家資格保有者を所持しているという、東京都文京区千駄木にある動坂指圧「和み」さんが教えてくれる便秘に効果的なツボの動画です。他の動画でも今回ご紹介したツボの場所や押し方を丁寧にご紹介くださっているので、ぜひチェックしてみてください。一覧はこちら

3-5. 便秘薬どう使う?

便秘薬は多くの製薬会社から販売されており、ドラッグストアに行けば、だれでも手軽に買えます。私もダイエット中に12日出なかった時にはさすがに焦り、薬に頼りました。夜1錠だけのんで寝ると翌朝、思いのほか楽に出てくれました。
便秘薬にもさまざまなタイプがありますが、その働きによって、大きく2つに分かれます。腸を刺激してぜん動運動を活発にさせるタイプと、硬くなった便に水分を含ませて柔らかくしたりかさを増やしたりするタイプです。前者は長期間服用を続けると、腸がその刺激に慣れて効き目が悪くなります。初期の便秘には、酸化マグネシウムなどを主成分とした、緩下剤と呼ばれる後者のタイプがいいようです。

ただし、いずれのタイプでも薬に頼りすぎると腸自体の働きが低下して、薬なしには排便できなくなってしまいます。薬を飲むのは、どうしても出なくてお腹が硬く張ってきたときなどにとどめておいた方がいいでしょう。

3-6. 医者にかかるのはどんな時?

自分がどんなタイプの便秘か分からないと、正しい対処の仕方も分かりません。さまざまな病気の薬の中には、副作用として便秘になるものもあるのです。便秘が長く続いて生活に支障が出るようなとき、あるいは病気や薬が原因で便秘になったと思われるときは、お医者さんに診てもらって、原因とタイプをはっきりさせましょう。また、便をチェックして血が混じって黒っぽいときなどは必ず行くべきです。
医師は問診に始まり腹部と直腸や肛門の検査をします。病気が疑われる場合はレントゲン撮影や血液検査をすることもあります。そのうえで、一般的には緩下剤を処方します。同時に、必要があれば、理学療法の一種である排便リハビリを行います。

3-7. 上手な排便の仕方

直腸と肛門の間はほぼ直角に曲がっています。このため、排便を促すにはやや前かがみになって、その角度を浅くする姿勢が望ましいです。いきむときにお腹を手で押さえると力が入りやすくなります。ただ、あまり強くいきみすぎるとかえって出にくくなりますから、適度なリラックスも必要です。

4. まとめ

ご説明してきた中から、便秘のキーワードを拾ってみると、「腸のぜん動運動」「自律神経」「食物繊維」「規則正しい生活」「便意を我慢しない」などでしょうか。

ただし、便秘にはいろんなタイプがあるように、個人差もあります。便秘に良いとされる食べ物をとっても、全員に効くわけではないのです。自分の便秘のタイプを知ったうえで対策を講じることが必要になってきます。

文中、腸内細菌の話をしましたが、腸内細菌のバランスを正して体質改善を図るとともに、病気まで治してしまおうという驚きの治療法が注目されています。なんと、他人の便を移植するというのです。「糞便移植療法」と呼ばれるこの手法については、後日紹介する予定です。お楽しみにお待ちください。

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藤原洋 フリーライター(元新聞記者)

大手紙の記者を36年務め、その後のフリーライターとしての活動期間も含めて、これまでに100人以上の医師を取材。 様々な疾患や症状の解説から、健康の土台作りま...

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